2月16日掲載の弁護士ドットコムNEWSのインタビューで、わたしは「文化庁は失格」だと強いことをいった。一方で、小委員会委員の生貝先生は、著作権課の過労を心配する記事を掲げられた。そういう観点からみれば、たしかに著作権課のみなさんは、そうとう疲れていらっしゃるのではないかという気持ちも芽生えてくる。

先週2月22日に自民党の文部科学部会で違法ダウンロード拡大を含む著作権法改正の方向性が、概ね了承されたとの報道がある。そのさいにどういう説明があったかについて、あちらこちらから情報が入ってきている。

一番「おや?」と思ったのは、原作者が問題視していなければ、二次創作のアップロードもダウンロードも「違法ではない」と、文化庁が説明したらしいことだ。

これは国民を激しく誤解させる表現だ。「問題視」が告訴のことだとするならば、告訴がなければ違法ではないのか???(いや違うだろう!)

それにここは「原作者」ではなく「著作権者」であるはずで、「二次創作」ではなく「二次的著作物」というべきではないか?(もっとも、後述するように、「二次創作」は「二次的著作物」とおなじではないが。)

もし「原作者が問題視していない」が「権利者の許諾があれば」の意味ならば、そのように正確に書くべきだろう。

ことば使いが官僚らしくなく、とても曖昧で、疲れているのか?あるいは議員をわざと誤解させようとしているのか?と思ってしまう。

さらに著作権法が目的とする「文化の発展」は、「適法な著作物の流通が前提」だと説明したようだ。

それならば、著作物の適法でない利用から発展したともいえる漫画文化などのことを、どう考えているのだろうか。

適法でない著作物の流通から生まれ、隆盛した文化があるとするならば、それは著作権法に欠陥があるということではないのか?

(そもそも、著作権法違反をせずに一生を過ごすことなどできないことは、文化庁の官僚もわかっているだろう。)

研究のために海賊版をダウンロードすることについては、権利者から許諾を取ればいいとの説明もあったようだ。

これは粗雑さが目立つ説明だ。研究資料を集めるときに、個々に許諾を取ればいいとは、そのためのコストが研究を萎縮させることになるとは考えないのだろうか。またいままでの経験でいえば、海賊版の研究利用について許諾を取りにいっても、無視されるか、許諾を出す立場にないと言われるか、断られるかの、だいたいどれかである。研究利用だから海賊版を落としていいですか?と権利者に聞けば、許諾してもらえるとでも思っているのだろうか?

また、これは重ねていうが、私的使用と研究利用は、とくに研究の初期段階では区別することができず、コンテンツ分野の研究ではその傾向が強い。研究目的は私的使用と関係ないとする文化庁の姿勢は、あまりにも文化研究に無知だというしかない。

刑事罰化については「二次的著作物」(第28条関係)を対象外にする案のようだが、「二次創作」には創作性のある「二次的著作物」と言えるかどうか微妙な模写もある。そうなると「複製権」がからんでくるので、「二次的著作物」でもって「二次創作」をすべてカバーはできない。

あとひとつ。以前に著作権法の改正過程についての本を2冊書いたときに気づいたことがある。それは、文化庁の官僚はいろいろなことをコントロールしているはずなのに、議事録などの表に出る書類からは、なかなか彼らの動きがわからなかったことだ。そのことにわたしは妙に感心さえした覚えがある。

ところが、今回は事務局が促して審議を打ち切った様子が、議事録にしっかりと残っている報告書にも議論が足りていないことがにじんでいる。それらを読むにつけ、ああ、優秀な官僚たちがこんな下手を打つなんて、いったいどうしたのだろうと思ってしまうのだ。