ダウンロード違法化の範囲を拡大する案へのパブコメ提出期限が、1月6日(日)に迫っています。わたしはつぎのようなコメントを提出します。

わたしは模倣文化を研究しています。日本には「写し」「本歌取り」といった豊かな模倣文化があり、それらには著作権のような近代の概念とは相容れない部分があります。研究活動の必要性から、著作権を侵害している文芸、美術、写真作品等でネットにアップロードされているものを、鑑賞のためではなく資料とするために、それと確定的に知ってダウンロードすることがあります。そうした行為が違法となるならば、模倣文化の研究が著しく困難になります。

ユーザーが違法サイトから確定的に知りつつダウンロードした事実を、いったいどのようにして証明するというのでしょうか。ここには、違法サイトと確定的に知っていたというユーザーの内面を証明することと、たんにサイトを閲覧していただけでなく画面保存を含むダウンロードを行ったことを証明することの、二重の困難があります。その具体的な手段を示したうえで、再度パブリックコメントにかけるべきです。

文章、写真などが正当な引用としてアップロードされていても、それをユーザーが違法と判断してダウンロード利用を控えるようになる萎縮が起きます。引用の正当性の判断は簡単ではありません。

海賊版の被害の実態について、権利者側が提出する被害額などを検証もせずに立法事実とするべきではないと考えます。公平な第三者機関を設立し、そこにおいて常にデータを収集・分析して立法の必要性を客観的に検討するべきだと考えます。

Sci-Hubのような論文海賊版サイトが生まれた理由のひとつには、外国出版社による学術論文出版の寡占による価格高騰に、国からの交付金を年々削減されてきた科学者や研究機関が耐えられなくなっていることがあります。国としてまず行うべきことは、学術雑誌購読価格の適正化を指導することや、オープンサイエンスのためのプラットフォーム作りではないでしょうか。

パブコメはエクセルのフォームをメール添付する方法と、WEBフォームから入力する方法とがあります。どちらもとても簡単です。個人情報を書く欄がありますが、気になるのならば空欄でもよいと思います。

とにかくいま意見を送らないと、ネットユーザーからはあまり反対が出なかったことになります。違法ダウンロード違法化の範囲を、文章、イラスト、写真、プログラムなど、ほとんどすべての種類のコンテンツに広げる「改正」を再考してもらうタイミングは、たぶんいましかないです。