ぜんぜん知らないことで何か調べたいことがあれば、ふつう、まずググる。すると、いろんなものが検索されて出てくる。なかには、新聞・雑誌記事を写メしたもの、引用とはいえない分量で文字起こししたものなど、違法だと確定的にわかるものも、けっこう混じっている。(2018.12.16追記:古いテレビCMなんかは、そもそも正規のソースがなくなっていたり、アクセスできなかったりすることが少なくない。)

違法アップロードされたものだとわかっていても、気になるものがあれば、とりあえずページごと保存したり、スクショしたりしておく。著作権法改正に向けた、いまの委員会中間まとめでは、この行為を親告罪ながら違法にして、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金の刑事罰までつけようというのだ。

教育研究機関の研究者や個人が、調査・研究・批評のために上記の行為を行ってよいという、はっきりとした法的な裏付けはみあたらない。しかし、これは「私的使用のための複製」だと思えば、ある程度安心してダウンロード保存できる。正規のソースからの情報でないのならば後から原典に当たり、論文や講演などで発表するときに許諾を取るか、問題ない形で使うように気をつけてさえいればよい。

検討中の案が実現してしまうと、違法なソースと確定的に知っていたら、私的使用のためであっても刑事罰の対象になってしまう。そうなると、調査・研究・批評にかかる手間と時間が膨大になり、インターネットによって拓かれた利便性が大きく損なわれる。結果として学術や文化の発展を邪魔してしまう。

わたしはコピー文化の研究者でもある。研究を進めるうえで、これは違法と確定的にわかるようなものも、重要な研究資料である。それをダウンロード保存できないようだと、研究環境は後退する。パブコメで公表されている文書には、こんな笑うしかないようなことも書いてある。

ウェブサイトに掲載されたテキスト・画像をプリントアウトする行為や、そこでプリントアウトされたものを更にPDF化してコンピュータに保存する行為は違法とはなりません。

デジタル保存しておきたければ、いったんプリントしてスキャンしろと。いったいどれだけの時間を無駄になると思っているのか。

ネットでのパクリをパトロールしているひとにしてみれば、誰かの権利を侵害しているページをみつけても、証拠保全のために保存することが、やはり違法になるだろう。

「中間まとめ」69ページにはこんなことが書かれてある。

6.その他について(研究目的での利用に係る権利制限)

 本課題に係る検討の中では,大学教授等の研究者が,著作権侵害とされた著作物を研究目的でダウンロードすることを含め,研究目的での利用を適法とする根拠規定が存在しないため,そういった利用に係る権利制限の在り方についても検討を行うことが必要ではないか,との意見があった。
 この点については,私的使用目的に係る権利制限の対象範囲の在り方と直接関係するものではないが,一定の社会的意義・公益性が認められる利用であると考えられるため,今後,本小委員会において,権利者の利益保護の観点にも留意しつつ,検討を行っていくこ ととする。

つまり、この部分については、私的使用とは別のことだが、検討が十分じゃないと認めている。

いま意見を出さないと、研究者らが困ることは「ない」ことになる。「包括的ダウンロード刑事罰化」が実現してしまわないようにするのは、「いま」しかない。法案が国会に上がってからでは、いくら騒いでも遅い。いまやっているパブコメに意見を送って、こうしたことに影響が出るといった具体的な「確たる事例」を示すのが効果的だと思う

「中間まとめ」には、「パブリックコメント等を通じて、事務局において引き続きユーザー保護が必要となる事例の有無について更なる検証を進めることが適当である」とある。委員会としても事例を広く集めたいのだと思う。

パブコメ提出の締切は1月6日です。